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階層モデルでヘッダがつくのはトランスポート層から下

アプリケーション層でもヘッダを付加するのか

実教出版「最新情報の科学」の「インターネットのプロトコル」という節があり、次のような図があります。実際には右側に受信側の様子が書かれていますが省略。

データに付けられる小さな四角は色で示された層で付加されるヘッダであると説明があります。

これは、こう書くべきではないかというのが、このページの主張です。

つまり、階層モデルにおいてアプリケーション層ではヘッダが付加されるのかどうかということです。

教科書の説明文

本文には、

送信側の4層で作成したデータに,各層で行われた処理に関するヘッダが次々と付加されていく。

データが4層で作成されると言っています。これはその通り。ここで4層がヘッダをつけるかどうかはこの文だけでは曖昧です。ヘッダがつくのは3層からと解釈すれば、図だけ間違ったねという事になります。

傍注には、

3〜1層のヘッダは全パケットに付加されるが,4層のパケットは付加されないパケットもある。

これで教科書の執筆者が誤解していることがはっきりします。

4層で付けられるヘッダというのは、おそらくはメールのヘッダのようなものを指すのだと思いますが、さらにエンベロープというものがあることを知っているでしょうか。

メールのヘッダは名前こそヘッダといいますが、明らかにデータの一部でパケットに付加するヘッダとは性質をことにするものです。

そもそも4層ではデータはまだパケットに分けられてはいません。パケットに分ける作業は3層で、分けたからこそヘッダを付加しなければならなくなったのではないでしょうか。

パケット通信の仕組み

この教科書では上記の4層のモデルの前に、「情報伝達の仕組み」で次のように説明しています。

すでに1節で学んだように、インターネットでは伝えたい情報のデータを小さく分割し、受信先と送信元の場所を表す情報などをつけて送り、受け取った側で元の情報に戻している。この受信先や送信元などの情報をヘッダといい、ヘッダがついた小さなデータをパケットという

メールのヘッダは分割前につけていますので、ここでの説明に合致しません。教科書の中で説明が一貫していないことになります。

加えてメールのヘッダ部の受信先や送信元などの情報は実際には送信に使われていないというのは、あまりにも有名な話です。

新課程「情報の科学」の教科書の表記の比較

出版社 記号番号 書名 教科書内の記述
東京書籍 情科301 情報の科学 パケット交換方式の説明ではヘッダにはふれていない。ヘッダと言えばウェブページのヘッダ部とメールのヘッダのことである。
実教出版 情科302 最新情報の科学 上記
実教出版 情科303 情報の科学 説明は簡略化されているが、302とほぼ同じ。図もほぼ同じ。
数研出版 情科304 高等学校情報の科学 アプリケーション層にもヘッダがあると説明している。図も302と似たようなものだ。しかし階層モデルの説明がパケット交換方式より先になっていて、パケットに分割するという話がここにないので、この教科書の中では説明を曖昧にすることに成功している。
日本文教出版 情科305 情報の科学 正しい説明をしている。階層モデルの説明ではアプリケーション層ではヘッダは付けず、トランスポート層からヘッダがつくという図になっている。
聖愛中学高等学校
安達順一
http://www.seiai.ed.jp/
2014-1-8