表計算(OpenOffice.org-Calc)

OpenOffice.org

OpenOffice.org はオープンソースで作られたオフィスソフトです。だれでも自由に使用でき自由に改良でき自由に再配布できるというオープンソースのライセンスで公開されています。世界中のたくさんの人が改良と普及に努力をしています。

OpenOffice.orgの保存するファイルの形式はODFです。ODFは、国際標準化機構(ISO)と国際電気標準会議(IEC)により、国際標準(ISO/IEC 26300)として認定され、日本でもJIS X 4401:2010として規格化されています。ソフトウェアの種類やコンピューターの機種に関わらず、異なるアプリケーション間で文書を交換でき、またデータを同じように編集、表示、印刷することができるようになりました。

Calc

OpenOffice.orgの表計算部分の名前がCalcです。

Microsoft Office のExcel形式のファイル(拡張子.xls, .xlsx)も読み書き出きるのでExcelの代わりに使用されることもあります。ただし完全に同じではありません。Excelの使えない環境もありますから、不特定多数の人との文書を交換には無料で導入できるOpenOffice.orgのファイル形式であるODF(拡張子.ods)がおすすめです。

Calcの起動

Writerの起動[アプリケーション]-[オフィス]-[OpenOffice.org Calc]で起動します。

起動したWriter起動直後の画面です。

セルの数値を使った計算

μSv/時 と mSv/年 の関係

福島第一原子力発電所の事故の影響で、各地の放射線のレベルが発表されています。その単位は多くの場合 マイクロシーベルト/時(まいじ) です。μSv/h とか μSv/時 と表記します。これは1時間あたりどのぐらいの放射線にさらされるかという単位です。

一般人の限度は 1000マイクロシーベルト/年です。 μSv/y とか μSv/年 と表記します。これは1年でどのぐらいの放射線にさらされるかという単位です。

そこで、μSv/時 の値を24倍して1日あたりの量にし、さらに365倍して μSv/年 にして比較する必要があります。

次の図は文部科学省のウェブページからの引用です。2011年5月24日の福島県の空間放射線量を表しています。

全国の放射線モニタリングデータより福島第一原子力発電所から20km以上はなれたところで測定したデータです。

クリックすると大きな画像になります。(同じ場所でも高さや地面が草かアスファルトかによっても変わりますから目安です)

【 】は測定場所の番号、その下の数値が放射線量です。

【1】の1.1を使って計算してみます。A2 というセルに入力します。

A B C D
1
2 1.1
3

B2 に =A2*24 と入力します。これは A2 に入っている数値に 24 を掛けたものをこのセルの値にしなさいという意味です。

A B C D
1
2 1.1 =A2*24
3

Enterを押すなどして確定すると、B2 に計算結果が表示されます。

A B C D
1
2 1.1 26.4
3

C2 に =B2*365 と入力します。これは B2 に入っている数値に 365 を掛けたものをこのセルの値にしなさいという意味です。

A B C D
1
2 1.1 26.4 =B2*365
3

Enterを押すなどして確定すると、C2 に計算結果が表示されます。

A B C D
1
2 1.1 26.4 9636
3

さらに、D2 に =C2/1000 と入力してEnterを押すなどして確定すると、D2にC2の値を1000で割った値が表示されます。(設定によっては 9.6 などと四捨五入して表示するかもしれません)

A B C D
1
2 1.1 26.4 9636 9.636
3

年間の値はマイクロシーベルトの1000倍の単位であるミリシーベルトで書かれていることが多いのでそれも表示するためです。1000μSv = 1mSv です。

A1からD1に単位を入れていきます。これで見やすくなるでしょう。

μ は 「マイクロ」で変換されないときは、「ミュー」 で出てきます。

A B C D
1 μSv/時 μSv/日 μSv/年 mSv/年
2 1.1 26.4 9636 9.636
3

自然放射線は日本では平均 0.6mSv/年 程度ですから、その分を差し引いて、9mSv が汚染によるものと考えられます。

一般人(法律では一般公衆などという)の年間放射線被曝限度量(自然放射線と医療被曝を除く)は 1000μSv/年=1mSv/年 ですから、その9倍になります。

実際には土ぼこりを吸い込んだり汚染された食品を食べたりすることも考えられます。それも含めて 1mSv/年 に抑えなければなりません。ですからもっと厳しい状態に置かれていることになります。

青森では

青森県環境生活部原子力安全対策課の「空間放射線量率等のリアルタイム表示」によると、2011/5/24の青森市では 27nGy/h とあります。また新たな単位が出てきました。ナノグレイ/時 と読みます。いろいろ面倒なことがあるのですが、多くの報道で行われている Sv≒Gy を採用すると、次のように 0.027μSv/h と換算できます。

27nGy/h ≒ 27nSv/h = 0.027μSv/h

またまた面倒ですが、1000μSv = 1mSv だったように 1000nSv = 1μSv です。

この値を A2 に入力します。

A2 に入力してEnterを押すなどして確定すると、B2からD2までのセルはなにもしなくても設定してある数式にしたがって計算し直します。(設定によっては四捨五入して表示されるかもしれません)

A B C D
1 μSv/時 μSv/日 μSv/年 mSv/年
2 0.027 0.648 236.52 0.23652
3

自然放射線は日本では平均 0.6mSv/年 程度ですから、0.23はそれよりも低い数値です。汚染はないと考えられます。

なぜ低いのか。まず東北地方は地面からの自然放射線が低いこと。測定器の地面からの高さ(高ければ小さくなる)、地面の状態(コンクリートか芝生かなど)によっても変化します。東通原発や六ヶ所の核燃施設から放射性物質が漏れていないことを確認するための施設なので地面からの影響をおさえるように設置しているはずです。原子力施設事故では放射性物質が飛来して地面に積もり放射線を出しつづけます。そうすると放射性物質が飛来しなくなってもすぐには分からないからです。

そこにいる人がどのぐらい被曝するかという観点の測定システムも欲しいですね。

表を作る

いろいろな値を入れて表にしてみます

A B C D
1 μSv/時 μSv/日 μSv/年 mSv/年
2 0.027 0.648 236.52 0.23652
3 1.1
4 1.8
5 3.4
6 0.9
7 2.0
8 0.6
9 9.7

次に、B2 にポインタを置き、右下の■を B9 までドラッグしてください。

ドラッグによるセルのコピー

このドラッグは、計算式をコピーします。次のようにそれぞれの行で正しく計算されます。

A B C D
1 μSv/時 μSv/日 μSv/年 mSv/年
2 0.027 0.648 236.52 0.23652
3 1.1 26.4
4 1.8 43.2
5 3.4 81.6
6 0.9 21.6
7 2.0 48
8 0.6 14.4
9 9.7 232.8

C列, D列も同様に縦にコピーします。

A B C D
1 μSv/時 μSv/日 μSv/年 mSv/年
2 0.03 0.65 236.52 0.24
3 1.1 26.4 9636 9.64
4 1.8 43.2 15768 15.77
5 3.4 81.6 29784 29.78
6 0.9 21.6 7884 7.88
7 2 48 17520 17.52
8 0.6 14.4 5256 5.26
9 9.7 232.8 84972 84.97

セルポインタを計算式をコピーしたところに合わせると、次の図のようにコピーされた式が上の方に表示されます。これで計算式が正しく設定されテイルか確認できます。

計算式の確認

もっと簡単に調べるには A列のどこかに 1 と入れて B列に24, C列に365と出ることを確認するのもいいでしょう。

課題

上記のように福島県の空間放射線量の地図から1時間あたりの数値をさらに拾って計算式をコピーし、より大きな表にしなさい。(全部を入力する必要はない。また、本来は地域名を入れたい所だが時間がかかるのでがまんする)

kadai に 空間放射線量.ods として保存しなさい。(.odsは自動でつきます)

計算しなくても

こまかな計算をしなくても、概算できるようにしておくと危険に見合った対策がとれます。

まず、空間放射線量は普通上記の様に μSv/時 (μSv/h)で伝えられます。1時間そこにいると受ける放射線の量です。そこに1000時間いると mSv の値になります。1000 ÷ 24 ≒ 42 なのでこれは約42日間にあたります。

次に、1年は 24 × 365 = 8760 ですが、計算を簡単にするため約10000とすると μをmにして10倍にすれば1年に受ける量が大体分かります。

たとえば、

0.08μSv/時 →数値を10倍して単位を換える→ 0.8mSv/年

ちゃんと計算すると 0.7mSv/年 ですが、十分でしょう。

自然放射線は日本では平均 0.6mSv/年 程度で、自然放射線以外の放射線被曝限度量は一般人で 1mSv/年 ですから、

空間放射線量の測定結果が 1.6mSv/年 程度に納まるなら安全です

ただし放射線被曝限度量の一般人で 1mSv/年 は、土ぼこりを吸い込んだり汚染された食品を食べたりしておこる内部被曝も含めての限度ですから 1.6 で安全といえるのは内部被曝がないときです。

安全でなければ危険なのではありません。

安全 → 注意して生活 → 危険

注意して生活するとは

花粉症の原因になる花粉が飛来して地面に積もると考えるとよいでしょう。マスクをして塵を吸い込まないようにするとか外出から帰ったら塵を落としてから入る。着替える。手、顔、髪など露出していた部分を洗う。ホコリを立てないようにていねいに掃除をする。

水、食品の汚染情報を集め、汚染されていない食品を選んで食べる。

空間放射線量が高いときには風上に避難したり遠くに旅行する。

空間放射線量の測定結果に注意し危険になったら逃げる。

自然放射線は 0.6mSv/年 程度の根拠

空間放射線量を測定するとき、自然にあるものと事故によるものを区別できませんから、自然にあるものを考慮しないと事故の影響を評価できません。

事故前の数値を知っておくことが一番ですが、そうでなければ日本の平均値を使います。日本における1年間の平均被ばく線量は1.45mSv程度といわれていますが、これには内部被曝も含まれています。内部被曝とは食品に含まれるカリウムからのものや、土に含まれるラジウムから生ずるラドンというガスを肺に吸い込むことによる体内からの被曝です。空間放射線量を測定する機器には内部被曝は含まれません。純粋に外部からくるものだけです。

そこで下記の表から外部被曝だけを足して約 0.6mSv/年 としました。

自然放射線による
被ばくの種類
世界平均
(mSv/年)
日本の参考データ
(mSv/年)
外部
被曝
大地放射線 0.5 0.32
宇宙線 0.4 0.27
内部
被曝
カリウム(K-40)
等の経口摂取
0.3 0.41
ラドン等の吸入 1.2 0.45

(出典:ナースのための放射線医療(放射線医学総合研究所監修,朝倉書店,2002))

自然放射線による被ばくが外部・内部合わせて 約1.45mSv/年です。この他に医療による被曝被曝も受けます。そこで、この他の余計な被曝の限度は外部・内部合わせて 1mSv/年 としようと決められたわけです。

ですから、自然放射線が1.45mSv/年あるのだから、余計な被曝が1mSv/年を越えても問題ないという説明は激しく間違っています。


コンピュータの基礎(Apr.2011)
聖愛中学高等学校
http://www.seiai.ed.jp/