宗教主任 石垣 雅子

聖書の言葉

その日の夕方になって、イエスは、「向こう岸に渡ろう」と弟子たちに言われた。

日本聖書協会『新共同訳 新約聖書』 マタイによる福音書4章35節

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わたしたちは時としてもはやどうすることもできないという思いを抱くことがあります。自分の努力が足りなかったとか、こんなことがどうして起こるのだろうとか考えてしまうことがあります。あるいは、人間の力を超えた大きなものの力の前に、黙り込み、たたずむしかない。そういうこともあるのだと思います。

3月11日14時46分に起きた東日本大震災から2ヶ月がたちます。地震・津波・原子力発電所の事故。心が痛む辛い出来事がたくさん報道されています。亡くなった方が1万5000人近く、行方不明者が1万人、そして避難生活を送っている方が12万人近いといわれています。家族や友人という愛する人を失った人々、そして自分の家から離れなければならない方々がたくさんおられるのです。ガレキの山となった映像をテレビの中に見るとき、悲しい思いになります。復興には長い時間がかかるだろうことが想像されます。

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今日読んだ聖書は、イエスが起こした奇跡の一つです。イエスが弟子たちと共に湖の向こう側に舟で渡ろうとしたわけです。途中まで来たら、激しい突風が起こり、乗っていた舟が水浸しで沈みそうになってしまった。弟子たちはおびえて、イエスにお願いをします。「何とかして下さい。おぼれてしまいます」とか言ったわけです。それで、イエスが風と湖を叱ると嵐がおさまったという奇跡物語です。

わたしは、嵐で舟が沈みそうという困難で大変な出来事に出会っておびえている弟子たちにわたしたち人間の姿を見ます。でも、イエスは「向こう岸に渡ろう」と呼びかけるのです。そこにとどまっていてはいけない。もっと先へ、一歩を踏み出すことを教えます。そして、そこに一緒にいて下さるのです。

どんな困難な中にもイエスは共にいる。おびえているわたしたちに励ましの言葉を与えて下さる。わたしはそこに慰めを得ます。そのようなイエスの姿に信頼を寄せたいと思います。わたしたちが今できることは何か、これからできることは何か。丁寧に考え、行動していきたいと思います。その道程にはわたしたちを湖の向こう側に行かせようとするイエスが共にいることをおぼえたいと思います。