リスニング 省略
全訳
ヘンリーはバスで通勤していました。職場へは35分ぐらいかかりました。バスに乗る時は、席に座るのが好きでした。そうすれば、眠ることも、本を読むことも、リラックス(ゆったり落ち着く)することもできました。けれど立ったままだと混雑した道路では左右に揺られることが常でした。彼は立っている他の人々にぶつからないようにしました。また、人々(乗客)がバスを乗り降りできるようにいつも車内を移動していました。実のところ、彼はバスの中で立っているのが嫌でした。でも、彼には席を見つけるために日頃よく使う戦術があったのです。彼が丘を横切って近道をし、(いつものバス停よりも)前のバス停で路線のバスに乗ると、座席を見つけることができたのです。
①(ヘンリーが乗るのと)同じバスによく乗る高齢の女性(老婆)がいました。彼ら(ヘンリーと高齢の女性)がバスで隣り合わせになると、彼女はいつも「おはようございます」といって彼にあいさつをするのでした。でも、彼は「どうも」としか言いませんでした。ヘンリーがバスの席を手に入れる方法を見つける以前は、バスの中で席を②見つけるチャンスはめったにありませんでした。彼がこの方法を見つけた後、この高齢の女性が立ちっぱなしにならざるをえなくなることが多くなりましたが、彼の方はいつも座席につくことができたのです。彼はこれを席をめぐる彼女(高齢の女性)とのある種の闘いだと考えました。彼は心の中でこう言いました。「僕はあの闘いに勝った。」しかし、彼は少しだけやましさを感じました。あれは彼女の席を奪ってしまうようなものだったのですから。それにもかかわらず、彼女は毎朝彼に挨拶をすることをやめませんでした。彼女はいつ誰に対しても親切にしていたのです。
ある日、ヘンリーが仕事から帰宅するバスの中で、突然、体調が悪くなりました。バスの乗降客たちは「大丈夫ですか?」と聞きました。彼は、静かに応えました。「大丈夫です。」けれども、彼は倒れるのではないかと思いました。彼は懸命に平気そうなふうをよそおいました。
突然、彼の腕に彼を席に導いてくれる手が添えられました。朝のバスのあの高齢の女性でした。帰宅の時に彼女がバスに乗ることはめったにないことだったのです。彼女は優しく彼を介助して自分が座っていた席に連れて行って、「さあ、席にどうぞ」と言いました。それから、彼女は彼を守るようにそばに立ちました。彼女がそばに立ってくれたので、乗客は彼の(ひどい)様子を見ることはありませんでした。ヘンリーは本当に体がきつそうでした。彼は本当に具合が悪かったのです。
「ここから自宅まではまだだいぶ遠いですよ。ずっと立ったままだとかなり体がきついはずです。」と彼女は言いました。
「ありがとう。すみませんでした。あのことも。。。。」と彼は言いました。
「え?なんのことですか?人は誰でもお互いに助け合うものです。もし、私の具合が悪くなったら、きっとあなたが私を助けてくれるはずです。そうでしょう?」と彼女は言いました。
彼は笑みを浮かべて言いました。「はい、③そうすると思います。ところで、僕の名前はヘンリーですが、あなたのお名前は?」
「エリザベスです。でもリズと呼んで下さいね。」と彼女は答えました。
彼らはいつものバス停にもう着いていました。彼の心の中にあったあの罪悪感は消えていました。「いろいろお世話になりました。リズ、ありがとう。明日また。」と言って彼はバスを降りました。
「明日またね」と言って彼女は座席に戻りました。あの日以来、彼は朝いつもリズに席を譲りました。④実は、誰にでも彼は自分の席を譲るようになったのです。